2016年3月10日木曜日

バイオマス発電について

<木質バイオマス発電について>

 
過日、東京ビックサイトでの「第1回国際バイオマス発電展」をのぞいてみた。再生可能な

エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)と電力自由化が誘い水となり、国内各地で木質バイ

オマス利用による発電事業が始まっている中での開催だけに会場は数多くの発電関連設備

が展示され、来場者数も殊のほか多かった。

●木質バイオマス発電の難しさ
日本での木質バイオマス発電は採算の取れる事業としての成功事例はこれまで限りなくゼ

ロに近い。今回の展示を観て、日本のバイオマス発電事業は、
結論から言えば、過去も現在も実際のところ補助金ありき事業であって、商業ベースにの

った採算の取れた電源としては自立するのはまだ遠い先のことのように思えた。
木質バイオマス発電の場合、日本のFITの買い取り価格は未利用木材で1Kw時当り32円。こ

れは蒸気タービンによる5Mw設備で1トン当たり1万2000円のチップを燃料にしたケースだと

聞く。しかしこれより小規模の発電設備では昨年42円の買い取り価格を設定したとはいえ

、事業運用は難しいのでは。
したがって設備の電気出力がも大きい設備にならざるを得ない。大規模な設備ほど発電コ

ストが抑えられ、その分採算性だ高くなる。
この日の会場でも大手メーカーの大規模の発電設備が多く展示され、導入が提案され計画

されている。
しかし現実はシビアだ。

●発電よりも熱利用の優先を
それだけの大規模の設備を導入するとなれば回収不可能なコスト高、しかも設備稼働、事

業運用するには、現在の木質バイオマス資源の収集、効率的なエネルギー利用等の諸事情

を考えると、補助金利用しても持続可能な発電事業は困難で無理な話である。
では、どすれば良いのか? 答えはひとつ。まず現状を踏まえての適正な木質バイオマス

利用は発電優先の形態でなく、熱利用優先の方が事業採算性も高く手堅いと思われる。
英国あたりではFITから木質バイオマスを外し、代わりに熱の固定価格の買い取りを始めて

いる。

●地域によって上手なカスケード的利用システムの構築
日本では当面、地域で容易に手に入る木質バイオマスをまず熱源として利用し、次のステ

ップとして電気供給を考える。地域によっては身の丈に合ったコジェネ(熱電併給システム

)の導入を図るのが賢明である。
いずれにせよ、木質バイオマス利用の成功は質、量の安定確保の入口、そこから得られた

熱(電気)の受け皿の出口の確保が肝心だ。
入口と出口が確保されて、始めて適正な設備導入の計画を立てるのがオーソドックスであ

る。
熱(電気)の生産事業のための設備なので慎重を期したい。
ちなみにフランス・パリのCOP21で採択された温室効果ガス(CO2)削減、カーボンニュート

ラルの視点からも木質バイオマス資源の利活用はさらに高まることは間違いない。
聞くところよると、化石燃料を基準にすると木質バイオマス発電はCO2削減は0.5トン。一

方熱生産であれば約1トンの削減になるという。このことからも発電よりも熱利用優先の政

策、制度が立案されるのではないか?